日銀は前年の2.0%の物価上昇率を目標とすることを、2013年1月に決めています。 なぜ2.0%なのかというと、日銀の黒田総裁によると3つの理由があります。一つは「物価の安定」、2つ目は「物価指数による特性」、そして3つめは「金利引下げ余地の確保」とのことです。
日銀としてはとにかくデフレに舞い戻ることだけは絶対に避けたいということです。物価が上がることで、企業の売上が伸び、収益が増加すれば、それに見合って、労働者に支払われる賃金は増加する、そういう流れを是が非でも作ろうとしているのでしょう。
老後に必要なお金とは
さて、「家計調査報告(家計収支編)―平成28年平均速報結果の概況―」によると高齢夫婦無職世帯の家計収支は次のようになっています。高齢夫婦無職世帯の定義は”夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦のみの無職世帯”です。
※出典:総務省統計局
まず収入です。社会保障給付が¥193,051、その他が¥19,784となっており、その他の内訳は、勤め先の収入・・¥5,068、配偶者の収入・・¥5,068、事業・内職収入・・¥4,202などとなっています。
次に消費支出の%を金額になおしてみます。
食料・・・¥64,890
住居・・・¥14,736
光熱・水道・・・¥18,778
家具・家事用品・・・¥9,032
被服及び履物・・・¥6,655
保険医療・・・¥14,975
交通・通信・・・¥25,195
教養娯楽・・・¥26,383
交際費・・・¥28,998
住居費の低さが目立ちます。これは持ち家の割合が高く、すでに住宅ローンの支払いが終わっている、ということでしょうか。
不足分と合わせた実収入の金額、つまり一ヶ月に必要な金額は、¥267,546となります。
私の場合、現在の給与、および年金システムが維持されるという仮定で年金機構で試算したところ、月の年金額は¥82,000ほどになるとのことでした。妻も同様だとすると二人で月に¥160,000ほどになります。先程の一ヶ月に必要な金額には¥107,000ほど足りません。
しかし我が家の場合、現在の一ヶ月の予算は¥200,000でどうにかやりくりしているので、試算した不足分¥107,000がそっくりそのまま必要になるとは思いません。老後も現在と同じような予算で生活できそうなら、不足分は毎月¥40,000になり、私の配当金と妻の資産でなんとかなりそうです。それよりもむしろ受給できる年金額の価値のほうが心配なのです。
ドルで資産を持つ
仮に日銀が今後20年ずっと年2.0%のインフレを目指したとして、それが平均1.0%達成されたとします。20年で20%の物価上昇率となります。すなわちこれは貨幣価値の低下も意味し、今のところ我が家が夫婦でもらえるであろう年金¥160,000は、20年後¥128,000の価値しかないことになります。
こうなると現在と同じ¥200,000で生活できたとしても、不足分は¥72,000になり、約2倍近い額が必要になります。
ところがもしドル建て、あるいはドルで資産をもっているとどうなるでしょうか。
インフレによる貨幣価値の低下が必ずしも対外国の通貨安になるわけではありません。しかし高齢化が今よりもすすみ、少子化による労働人口の減少は国の人口減少以上にすすむでしょう。失われた20年の間に日本を代表するような世界的な企業は起こりませんでした。楽観的に見ても20年後の円は現在よりも弱くなっていると考えるのが妥当ではないでしょうか。
仮に対ドルに対して20%今よりも安くなったとすると、1ドル=110円→1ドル=132円、30%安くなったとすると1ドル=143円です。これらの数字は歴史的に見てなんら違和感はない数字です。
つまり長期的に見て、ドル建て、あるいはドルで資産を持つことは、円の価値が下がるインフレ対策にもなり得るのです。